ねざめ堂

アニメ・映画・音楽

2016-01-01から1年間の記事一覧

『ゴーン・ガール』感想  ~「外面」が勝利する世界

デヴィッド・フィンチャー監督『ゴーン・ガール』(2014年)の感想です。この映画については、公開当時に記事を書いたんですけど↓ 軟着陸は可能か? ~『ゴーン・ガール』感想 今回の文章は、そのときボツにしたバージョンです(さいきん文書フォルダを整理…

『がっこうぐらし!』感想 ~丈槍由紀と「かれら」の失楽園

アニメ版『がっこうぐらし!』の感想です。この作品については、リアルタイム放映時(2015年秋)にも記事を書いていたんですが↓ 丈槍由紀は堕天する、のか? ~『がっこうぐらし!』雑感 丈槍由紀の(半)堕天 ~『がっこうぐらし!』雑感 その② 今回はあら…

『淵に立つ』の浅野忠信をみて考えたこと

『淵に立つ』(公式サイト)を観た。素晴らしかった。「夫婦や親子といってもやっぱり理解しあえない他人同士だし、そういう人たちがなんか一緒に暮らしてる家族って不思議」という映画で、でも「しょせんは家族なんて」みたいな幼稚な露悪趣味は感じさせず…

映画『聲の形』感想メモ:「スキ」と「バカ」

※ちょっとした「気付き」についてのメモ的記事。ネタバレあり〼 先日行われた『聲の形』の舞台挨拶で、山田尚子監督がこんなエピソードを披露していたそうです。原作にはないアニメオリジナルのシーン…学園祭での硝子と植野の「バカ」のやりとり、手話(指文…

『たまこまーけっと』『たまこラブストーリー』記事のまとめ

当ブログでは『たまこまーけっと』『たまこラブストーリー』関連の記事を書きすぎて、どれから読んだら良いのかわかりにくい状態になってしまっているので、比較的まとまりが良いんじゃないかなー?と思われる記事を4本抜粋して宣伝です。 まず『たまこまー…

映画『聲の形』感想 ~コミュニケーションの不完全さをあぶりだす

※記事前半はネタバレなし、後半はネタバレあり感想です。 先日、試写会でひと足早く、映画『聲の形』(公式サイト)を観ることができました。誘ってくれたランゲージダイアリーの相羽さん(ブログ)ありがとうございます!! 大変な傑作でした...。「すっご…

『パルプ・フィクション』感想 〜ストーリーとテーマの「ズレ」が生む気持ち良さ

クエンティン・タランティーノ監督『パルプ・フィクション』(1994年)を超ひさびさに観直したので感想です。ネタバレがありますので、ご注意ください。 ◯ストーリー:着地点なし 『パルプ・フィクション』はいちおうクライム・ムービーの体裁をそなえてはい…

『菊次郎の夏』感想 ~「あの世」からの生還

北野武監督の『ソナチネ』(1993年)と『菊次郎の夏』(1999年)を比較した記事を以前書いたことがあるのですが、 北野映画、「遊び」の意味の変遷 ~『ソナチネ』『菊次郎の夏』感想 今回は、その文章には盛り込むことのできなかった事柄を掬い上げた記事で…

『クリーピー 偽りの隣人』感想:「本当はつながってないよ、人間なんて」

楽しみにしていたのに何かとタイミングがあわず、先日やっと観てきた『クリーピー 偽りの隣人』。 www.youtube.com 大傑作でした。ひさびさの「ジャンルから逸脱するジャンル映画」を撮る黒沢清!バカでかい掃除機最高!!! 以下、ネタバレ感想です。 ◯秩序…

『ふらいんぐうぃっち』をキーカラーで振り返る

当ブログではこのところアニメの記事がご無沙汰だったんですが、今期もいろいろと楽しく観ておりました。 なかでも『ふらいんぐうぃっち』は、一見のほほんとしているようでその実しっかりと練り込まれたストーリー構成や、きめ細かい演出に惚れ惚れとさせら…

『アウトレイジ』と『アウトレイジ・ビヨンド』の面白味の違い

ふと思い立って、公開当時に映画館で観たきりだった北野武監督『アウトレイジ』(2010年)と続編『アウトレイジ・ビヨンド』(2012年)をまとめて鑑賞。 続けて観たら、シリーズ1作目と2作目ではけっこう違う種類の面白味を追求していることに気付いたので…

『ワールド・ウォー・Z』(小説版)~中心のない悪夢

世界ゾンビ大戦小説『ワールド・ウォー・Z』を今ごろ読んだので感想です(原書:2006年 日本語版:2010年出版)。著者のマックス・ブルックスって、あのメル・ブルックスの息子なんですね。びっくり。 小説とは別物だった、ブラッド・ピット主演の映画版(20…

『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(後編)

※前編はこちら ◯虚構は現実に憧れる 前編は「現実・日常」指向の強い『けいおん!』と、その後期から浮上した「共同体テーマ」についてざっと触れたところで終わりました。 ここからの後編では「虚構と現実の縫合」へのアプローチを継続した作品について見て…

『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(前編)

ゼロ年代京都アニメーションの代表作『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ。 この記事は、「10年代京アニ諸作品の原点=『ハルヒ』」という仮定のもとに、『ハルヒ』以降の京アニがどのように作品を発展・展開させた結果、最新作『無彩限のファントム・ワールド』に…

『モンスターズ・インク』 ~システム再定義の物語

こんどの金・土曜日に『モンスターズ・インク』(2001年)~『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)の連続放送があるそうです(終了しました)。とくに『モンスターズ・インク』は傑作なので、未見の方はぜひ! このアニメ、エネルギー供給システム(広…

『トウキョウソナタ』感想:都市に踏みとどまる「赤い服の女」

昨年の『岸辺の旅』に続き、今年も黒沢清監督の新作が2本も観られる!嬉しい。 まず『クリーピー』(公式サイト )は6月公開。最近、一足先に観た人たちの「やべえ!」というリアクションがちらほらと視界に入ってきてイライラMAXです。はやく観てえ...。…

「ファミリー」映画としての『オーシャンズ12』

景気の悪いことが多くて、パーっと豪華な娯楽映画が見たい気分になったので、ひさびさに『オーシャンズ12』を鑑賞。 これを3週間で撮影してしまうソダーバーグ!クルーニーとブラピが並んだときの無敵のゴージャス感!なんか色々と別次元です。ハリウッドす…

「スクールアイドル・プロジェクト 第0話」としての『ラブライブ!The School Idol Movie』

公開時に観逃していた劇場版*1をようやくフォローできたので感想です。 「神モブ」(通称)のテレビ版からのキャラ変更を起点に、あれこれ考えたことなど(ネタバレ注意)。 ◯テレビ版とのコンセプトの違い 観終えてまず思ったのは、テレビ版と今回の劇場版…

双方向の侵蝕 ~『ベニスに死す』感想

お正月に久々に観返したら、やっぱり「エエな〜」となったので、むかし他所のサイトに投稿した感想文をちょっといじって転載(小説じゃなくて、ルキノ・ヴィスコンティの映画版の感想です)。