ねざめ堂

アニメ・映画・音楽

2014-01-01から1年間の記事一覧

雑感:今年もまた暮れてった(2014年アニメベストなど)

大晦日。厳かな除夜の鐘の音とともに、今年経験した大切な思い出のひとつひとつが、じんわりと胸に蘇ります。嘘です。今年もアニメぐらいしか良い思い出がなかったな、うん。 普通こういう振り返り記事は、もうちょっと早くアップするものですよね。いまごろ…

軟着陸は可能か? ~『ゴーン・ガール』感想

映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト 面白かった! 149分かけて、物語のスタート時には想像もしなかった奇妙な地点まで連れていかれてしまう、ワープホールみたいな映画でした。 公式サイトのリンクを貼りましたが、もし観にいく予定があれば、内容に…

『たまこまーけっと』を振り返る:序論「結局、デラってなんだったの?」

※『たまこまーけっと』全話のネタバレがありますので、ご注意ください。 『たまこラブストーリー 』円盤発売のときの記事 で、「たまこ関連の記事はこれで最後」みたく書いたのをあっさりと覆して、「『たまこまーけっと』を1話ずつ振り返る企画をやろう!…

美少女キャラの消失 〜『かぐや姫の物語』感想(短縮版)

12月3日に、『かぐや姫の物語』BD/DVDがリリース。 映画『かぐや姫の物語』DVD・Blu-ray情報 今回はこれに便乗して、以前書いた感想記事の短縮バージョンです。 この作品が、現在の日本アニメがおかれた状況を批評的に描いた寓話だった、という観点からの…

甘城ブリリアントパーク 第8話『恋心が届かない!』感想

ネタバレ注意です。 シンプルにギャグ回としても面白いし、作品のテーマにも直結と、充実回だった第8話。個人的には、コミュ障の西也と中城椎菜のあいだの溝を、いすずやモッフルたちが「コミュニケーションのリレーに失敗することで、逆に繋ぐ」というあた…

甘城ブリリアントパーク 第7話『プールが危ない!』感想

もうちょっと話がたまってから感想を書く予定だったんですけど、前回書いた、1~6話通しての感想記事とけっこうダイレクトに繋がる内容のエピソードだったので、思わず更新。ネタバレ注意です。 前回の記事でも第4話をメインに取り上げましたが、現在まで…

可児江西也と千斗いすずは「バディ」になれるのか 〜『甘城ブリリアントパーク』感想

『甘城ブリリアントパーク』前半終了なので、第1〜6話通しての感想を。ネタバレ注意です。 第3話までは、パークの全体的・外面的な窮状がメインに描かれていた『甘ブリ』ですが、第4話(感想 )・第6話と、ヒロイン・千斗いすずの心情にフォーカスした…

『PSYCO-PASS サイコパス』 1期・2期の殺人描写の違いと「作中悪」について

現在放映中の『PSYCO-PASS サイコパス2』。全11話とのことなので、先日放映された第5話で前半戦終了の模様。 毎週おもしろいな~!とかぶりつきで観てるんですけど、この2期、劇中での人の「殺され方」、暴力の描写が1期とはだいぶ違いますよね。 1期がすご…

甘城ブリリアントパーク 第4話『秘書が使えない!』感想

第4話がすごく好きなエピソードだったので、思わず更新。ネタバレ注意です。 ◯ 千斗いすずのキャラクターとしての「覚醒回」だった第4話。描かれたモチーフとしては「適材適所」みたいなことがひとつありました。 いすずが軍人の家系出身だったことが明らか…

『PSYCO-PASS サイコパス』(1期)を振り返る

この記事は、2014年夏に放映された『PSYCO-PASS サイコパス 新編集版』(全11話への再編集・新規カット追加版)に準拠して書かれています。 感想を書くにあたっては、『サイコパス』(1期)全編にくわえて、ストーリーをつくるうえで参照したと思われる映画…

うさぎ山商店街の 「 if 」としての『甘城ブリリアントパーク』

もう気付いてる人も多いと思うので、ちょっと今更感あるんですけど、『たまこまーけっと』ファンとしてはやはり言っておきたい!とウズウズしてしまったので、第1話の感想もかねておもわず更新。 『甘ブリ』って、『たまこま』を意識させるシーン入れてきて…

拡散と凝縮 ~ たまこラブストーリー 感想

『たまこラブストーリー』BD/DVDが10月10日(金)に発売(Blu-ray & DVD:PRODUCT | 『たまこラブストーリー』公式サイト)!ということで、記念?更新です。 『たまこま』と『たまこラ』に関しては、なにしろ好きなのでこれまでにも何度か記事を書いてきた…

線的な物語/面的な物語

このブログを書くにあたって、これまで何度か「線的な物語/面的な物語」という言葉を使ってきました。例えば、このあたりの記事 ↓ 『たまこまーけっと』と『風立ちぬ』 3.11以降の主人公たち ㊥ 「まーけっと」から「ストーリー」へ 〜 『たまこラブストー…

成長と、その失敗の物語 〜『思い出のマーニー』感想

※映画・原作のネタバレを含みますので、ご注意ください。 正直あんまり期待してなくて「一応おさえとくか」ぐらいな感じで先日やっとこさ観た『思い出のマーニー』…ところが、これがめちゃくちゃ良かった。エンドクレジットを眺めながら「 ”おさえとくか” な…

「身も蓋もない」という誠実さ 〜 『ソーシャル・ネットワーク』感想

The Social Network Official Trailer -In theatres Oct 1 2010 『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)は、マーク・ザッカーバーグがFacebookを立ち上げ、それが巨大化していく様を描いた作品で、つまり実在の人物・出来事を題材にとっています。 とはいえ…

北野映画、「遊び」の意味の変遷  ~『ソナチネ』『菊次郎の夏』感想

8月ももうすぐ終り。「今年もまた夏らしいことができなかった…」というガッカリ感がヤバいので、せめてもの夏のしめくくりにキタノブルーでも!と思いたって、何本かまとめて北野映画を観返すなど。今回はその中から『ソナチネ』と『菊次郎の夏』の感想です…

「分人」の視点からみる『ゆゆ式』 ~『ゆゆ式』感想 その②

※その①はこちら→ 『ゆゆ式』感想 その① 今回は「分人」という視点から、アニメ『ゆゆ式』を見てみます。 「分人」は作家の平野啓一郎が提唱しているあたらしい言葉・人間観で、それについて書かれた新書(『私とは何か 「個人」から「分人」へ』)は話題にな…

友情/独立/分人 ~『ゆゆ式』感想 その①

ふと気付けば、アニメ版『ゆゆ式』の放映からはや丸1年…ってウソだろ! と唖然としたのが先月のこと。それから少しずつ見返して、先日最終話まで見終えのですが、いやーやっぱり面白いです。見ればみるほど脚本も演出も緻密。 原作・アニメともに、この作品の…

雑感/どうして記事が長くなってしまうのか?他

かなりとりとめのない雑感、月末の反省会的記事。なぜか一瞬『魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語』のネタバレがあります。 丁稚:番頭さん、ちょっとこの記事読んでみてくださいよ。 (15年2月1日追記:アニメ専門サイト『AniFav』の『たまこラブストーリー…

ダフト・パンク『ランダム・アクセス・メモリーズ』感想

Daft Punk 『Random Access Memories』がリリースされたのは去年の5月で、すごく気に入って夏のあいだよく聴いてました。 大ヒットした先行シングル『Get Lucky』はえらく景気の良いイメージがあったけど、全体を通して聴くと、ムード的にも表現している内…

「内」と「外」 ~『ハナヤマタ』と『けいおん!』、演出の視点について

先日放映が開始された『ハナヤマタ』。 きらら系原作、シリーズ構成が吉田玲子、そして冒頭いきなり『けいおん!』まんまのシチュエーションでの演奏シーンをぶっこんできたということで、「おっ攻めの姿勢!」と軽くのけぞったんですが、このあたりについて…

北白川たまこの孤独と、その解消

わりとよくいわれることですが、『たまこまーけっと』の北白川たまこは、感情移入のし辛い主人公でした。ファンのあいだでも「サブキャラは応援したくなるけど、たまこは何考えてるのかわかんなくてちょっと不気味」なんて意見がチラホラきかれたぐらい(あ…

『中二病でも恋がしたい!戀』感想②:「連関天則」の意味するもの

このあいだアクセス解析を眺めていたら、「連関天則」のキーワード検索経由でこのブログを覗いてくれる方が時折いるらしいことに気づきました。 「連関天則」は『中二病でも恋がしたい!戀』に登場するキャラクター、七宮智音が何度か口にする中二用語。劇中…

洋楽好きに「日常系アニメ」の魅力を布教してみた。

最近ちょっとアニメに興味が出てきたという、非オタで音楽好きの友人との会話を元ネタにして書いてみました。 丁稚:今回は、音楽好きな番頭さんにむけて「日常系アニメ」の魅力を説明してみよう、という企画です。 番頭:日常系アニメって『けいおん!』と…

100年後のアダムとイヴの物語 ~ 長谷敏司『BEATLESS』感想

長谷敏司のSF長編小説『BEATLESS』*1(2012年)の感想。以前他のサイトに投稿した文章を、ちょっと手直ししたものです。 この小説はもともとはアニメ専門誌・月刊Newtypeに連載されていたそうで、イラストレーターのredjuiceによるかっこいいイラストがつい…

『ハンコック』にみる、"アメリカ" のオリジナル・コンセプト 

今日の夜テレビ放映、ということで思い出して、以前書いた文章をひっぱり出してみました。結末には触れていませんが、一部ネタバレを含みますのでご注意ください。 宗教がかった『アイ・アム・レジェンド』といい、ヘンな映画ばかり撮っているアレックス・プ…

「はみだし者」の存在意義 〜 僕らはみんな河合荘 感想

※『僕らはみんな河合荘』第6話『もしかして』のネタバレがありますのでご注意ください。 アニメやまんがにでてくる「下宿」や「寮」って、「変人の巣窟」なことが多いですね。とくに、そこが作品のメイン舞台の場合。 作り手は「おもしろい話」を作ろうとし…

美少女キャラの消失 〜『かぐや姫の物語』感想

幾原邦彦監督の、この映画への反応。2013年12月1日のツイート。 そんなに解釈を考えることなく、頭の中、真っ白で観ても十分に面白いと思う。 それでも考えるなら「私たちを食べさせてくれたナウ×カとか美少女は月に帰ってしまいました。それでもここに残さ…

アニメは「あらすじ」ではない 〜 『たまこラブストーリー』感想 (ネタバレなし)

作品の情報量が多すぎて、まだ整理がついていない状態なんですが、もう予想を超えて素晴らしかった。頭クラクラしました。 観ている最中は、つねにスクリーンから気持ちの良い春の風がフワーっとただよってきて、観終わったあとも、映画に出てきたきれいな色…

『氷菓』で考える、技術と表現の関係

『氷菓』って、地味な佇まいではあるけれど、ものすごく画期的な作品だったと思います。「アニメーションの表現領域を拡大した」といってもいいくらい。 どういうことかというと、『氷菓』の原作小説は登場人物の曖昧で割り切れない感情を扱っていて、その曖…