ねざめ堂

アニメ・映画・音楽

雑感:今年もまた暮れてった(2014年アニメベストなど)

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 大晦日。厳かな除夜の鐘の音とともに、今年経験した大切な思い出のひとつひとつが、じんわりと胸に蘇ります。嘘です。今年もアニメぐらいしか良い思い出がなかったな、うん。

 普通こういう振り返り記事は、もうちょっと早くアップするものですよね。いまごろはみんな『憑物語』観てるだろうし、もしこの記事を読んでくれる人がいても、年が明けてからだろうなー(あけましておめでとうごさいます)。1年の最後まで、なにかと気の利かないこのブログでした。

 
◯2014年アニメ5選(順不同)

 

・『たまこラブストーリー
・『思い出のマーニー』
・『サイコパス2』
・『Wake Up, Girls!』
・『甘城ブリリアントパーク』


 制作期間や制作費など、かなり諸条件が違うであろう劇場用アニメとテレビアニメを同じランキングに入れるかどうかについてはちょっと迷ったんですけど、「劇場用アニメだけでベスト5が選べるほどの本数を観ていない!」という理由で一緒にしちゃいました。

 そ、そのせいで、あれだけハマった『ハナヤマタ』が!『中二恋・戀』が!『ヤマノススメ セカンドシーズン』が!


◯『たまこラブストーリー』『思い出のマーニー』

 まず、劇場用アニメ2作。「順不同」とはいうものの、個人的には別格扱いの『たまこラブストーリー』については、このブログでもさんざん記事を書いたので、ここではその記事をあらためてよろしくお願いします!とだけ。(アニメは「あらすじ」ではない)(拡散と凝縮 

 『思い出のマーニー』(感想 )は正直あまり期待しないで観に行ったんですけど、結果的にはジブリベスト3に入るぐらい好きな作品になりました。

 この劇場用アニメ2作に共通しているのは「セリフに頼らない感情表現」へのこだわり。アニメに限らずドラマでも実写映画でも、メインストリームでは何かと説明過剰な作品が多い最近の傾向のなかで、映像作品として非常にまっとうな努力をしているなあ、と、観ていて嬉しくなりました。

 

◯テレビアニメ3作品

 テレビアニメに関しては、やっぱり悩ましかったです。選ぶうえでの基準を「安定して面白かった作品」にするか「全体の出来は多少デコボコしていても、チャレンジングだった作品」にするかによって、結果が全然違ってくるんですよね。

 今回は後者の基準を採用したので、圧倒的なブヒリティの高さを誇った『ご注文はうさぎですか?』みたいな作品が漏れてしまったんですけど、そういう安定して面白い作品を供給するのもやっぱり凄いことだよね、というのは大前提として。


◯『サイコパス2』

 シリーズ前半に関してはこのブログでも感想を書いたんですが、後半も基本的には、記事中で触れたような「自分の属するシステムのあり方に無自覚 / 無関心な大衆の責任」を追求する方向に話が進んでいきました。

 ただ、その突き詰め方がちょっと凄かった。記事の中で「アドルフ・アイヒマン的な悪」という言葉を使ったのですが、まさにそういうハンナ・アーレント的な問題意識、「悪の凡庸さ」とか、システムと個人の責任の関係とか、最終的には共同体の「目的」はあるのか?とか(アーレントは否定)、そんなレベルの問題まで作品の射程に入っている感じ。

 日本って国は凄いものをテレビで娯楽としてやってるなー、とあらためて思わされた作品でした。

 個人的にめっちゃ注目していた霜月美佳ちゃん(「凡庸な悪」の代表キャラ)の追い込まれっぷりもおかしくて、後半の「私は悪くない…」っていう顔芸の連発には笑わされっぱなしでした。佐倉綾音さん美味しすぎる!

 あとこれは二次元限定の話なんだけど、「ダメな女の子キャラ」ってエロいですよね。美佳ちゃん、なんかやたらとムラムラくるキャラでした。そうでもないですか?

 

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◯『Wake Up, Girls!』

 このアニメも感想 を書いたので、詳しくはそちらを読んでいただけたら嬉しいです。

 個人個人がそれぞれに持つ「物語」を抑圧して、完璧な統制を目指すプロ集団としてのアイドルグループ「I-1Club」と、それぞれの「物語」を抑圧しない、雑多な「個」の集まりである「WUG」の対比。

 もちろん作品的には「WUG」の価値観に寄り添っているんだけど、「I-1Club」を悪者扱いしてるわけではないんですね。こっちはこっちで、プロとしては正しい姿勢なんだけど、でもアイドルの強みっていうのは個々の「物語」を打ち出せるところにあるんじゃないかと。

 ひとりひとりが持つ「物語」がファンを惹きつけて、ファンもその「物語」に参加していけるという現在のアイドルのあり方(ビジネスモデル)のなかに、「個」の価値の再評価という(イデアとしての)希望を見出そうとしていた作品だったと思います。

 まさかの劇場版!!も発表されて、来年の楽しみが一つ増えました。このアニメのキャラデザってけっこう独特だと思うんだけど、すごく好みです。基本DDだけど、強いていえば真夢推し。

 あの生真面目さ、カメラの前で弾けたポーズをとっていても、どこか「プロとして頑張ってる」感が漂ってくる、あの「堅さ」がエロいと思います!

 

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◯『甘城ブリリアントパーク』

 こちらも感想を何本か書いているので、読んでいただけたら嬉しいです(一番まとまった感想→可児江西也と千斗いすずは「バディ」になれるのか )。

 この感想に書いたように、個人的にヒロイン・いすずの境遇(本来の得意分野から、ムチャぶりな人事異動でまったく経験のない仕事に回されるという社会人の悲愁)に肩入れして観ていたので、彼女のドラマ部分に関しては正直「中途半端だった...」感は否めません。

 もちろん原作が刊行中の作品なので、全てにケリがつかないのは仕方ないとしても、いすずさんにはメインヒロインとして後半もうちょっと能動的に動いて欲しかったなー、と。あれだけ落ち込んでいる描写を積み重ねていたわけですし。

 それでもこの作品を選んだのは、第12話のAパートがあまりにも素晴らしすぎたから。ネタバレになるのでここであまり詳しくは書けませんけど、もう「一票の格差を放置してる政治家見てるか!」と、いや、絶対見てるわきゃないんだけど(笑)、そのぐらいテンションが上がってダダ泣きさせられた回でした。

 もちろんその場面単体だけじゃなくて、そこに至るまでに作品が積み上げてきたテーマや文脈があっての感動で、また「泣かせてやるぞ」という演出じゃないのが素晴らしいんですよね。観ていない方にはなんのこっちゃの文章で申し訳ないですが、すごく志の高い作品だったと思います。1年の締めくくりに素晴らしいものを見せてもらったなあ、と。

 あと、話数単位で観たときの第4話とか第8話(感想 )の完成度には、鬼気迫るものがありました。なんなの?この画面から滲み出てくる、クオリティに賭ける異様な執念。とくに第8話の脚本の練り上げられ方、それに連動した演出の凝りようは軽く引くレベル。

 「ダメな女の子キャラ」好きの自分としては、その第8話で登場、「清楚系ビッチ」「子宮で考える系女子」などなど一部で大人気だった香苗ちゃんが大変エロ可愛かったと思います!

 

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◯BGM部門

 

 ヤマノススメ セカンドシーズン』 音楽 Tom-H@ck / yamazo

 

 全ての面において丁寧な作りが素晴らしかった『ヤマノススメ セカンドシーズン』。もう、作り手の作品愛をひしひしと感じるアニメで、生楽器のナチュラルな響きが存分に活かされた劇伴も、自然のなかでのシーンが多いこの作品に見事にマッチしていました。

 OPテーマの作曲も手掛けたTom-H@ckは『けいおん!』シリーズの楽曲をたくさん手掛けていた人ですが、今回はかなり違った雰囲気の曲作りにチャレンジしていて、これがまた良いんですよね。『夏色プレゼント』も『毎日コハルビヨリ』も名曲でした。とくに、ポップ職人魂が炸裂しまくった精緻なアレンジ!

(『毎日コハルビヨリ』のアレンジはyamazoが手掛けているのですが、こちらも素晴らしい!)

 キャラ的には「森の妖精」こと青羽ここなちゃん推しなんですけど、最近1期を見返したら、初登場のときのポンコツっぷりに驚きました。あおいに「この娘、めんどくさーい!」とか思われてるし。今やかなりのハイスペックキャラですが、最初こんなだったんだ...ダメ可愛い!

 

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◯ヒロイン・オブ・ジ・イヤー

 

 コイツです。

 

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 Free! -Eternal Summer-』松岡凛


 負けん気が強いくせに人情肌で面倒見がよくて、感激屋さんですぐに泣く。なんだろう、このヒロイン力の高さ。

 じつはこの『Free! ES』、『甘城ブリリアントパーク』と最後までベスト枠を争った作品のひとつでした。

 1期でいったん描き切ったテーマ(世の中で支配的な「競争原理」に対抗する、共同体の価値)は引き継ぎつつ、こんどは実力者たちがしのぎを削る大舞台に飛び出していく。でも競争原理には飲まれないぞ、という「二項対立からの脱却」。

 この「二項対立からの脱却」は、京アニ的には『境界の彼方』とか『中二病でも恋がしたい!戀』( 感想 )などでも扱っていたテーマで、「複雑化する一方の世界にはもう耐えられないから、認識を単純化して安心してしまいたい」という誘惑にたいする解毒剤的な物語を志向している感じです。

 これまた近年の京アニがこだわり続ける「多様性の肯定」ともつながるテーマで、すごく真面目な姿勢で物語を作ってるなあと思うのですが、今回は特に難易度の高いことをやっていて。正直にいうと、作品全体のテーマ的にはやや分裂してしまっていたかな?という印象を受けました。

 でも、エピソードごとの完成度はおそろしいほど鉄壁で「すげえ…」と思いながら毎回楽しませてもらっていた作品です。ヤンホモ宗介のその後も気になるし、劇場版、作ってくれてもいいのよ?(チラッ


◯2015年の注目作品

 

 最後に、まだ情報が出ている作品は限られてますけど、とりあえず現時点での期待作。

 劇場アニメだと、『劇場版 サイコパス』(公式サイト)、『劇場版 境界の彼方』(公式サイト)、『PROJECT-ITOH』(公式サイト)、『WakeUp,Girls!』(公式サイト)が楽しみです。なにしろ映画館が遠い田舎に住んでるので、全部観に行けるかどうかは心許ないですけど。

 テレビアニメだと、まずはなんといっても「あの」幾原邦彦×森島明子うおおおおおおおお!)という、百合濃度が高すぎて窒息しそうな『ユリ熊嵐』(公式サイト)。なんかもう、公式のビジュアルを眺めてるだけでいろいろとたぎってきちゃいます。

 いや、実際百合要素があるかどうかはわからないし、別になくてもいいんですけど、いずれにせよ作品として大注目。放送前の予習として、このお正月は『ピンドラ』観返しておこうかなという勢いです(ウテナはちょっと長過ぎるから)。

 『Charlotte』(公式サイト)も問答無用のビックタイトルですね。

 『Angel Beats!』大好きだったので、ひさしぶりの麻枝准×P.A.WORKSの組み合わせはホント楽しみ。今回の円盤特典には、キャラクターコメンタリーはつくのか?また『AB!』のキャラコメばりにもの凄いことになるんだろうか…!?

 そして京アニの新作『響け!ユーフォニアム』(公式サイト)。

 スタッフの配置が面白くて、監督は石原立也、「シリーズ演出」が山田尚子なんですね。「総監督」と「監督」みたいな感じなのかな?

 これ『たまこラ』で完成型を見た山田尚子のスタイル(記号性の低い、抑制の効いた繊細な描写)をいったん壊すというか、相対化しようという意図のある企画なんじゃなかろうか。サイトを見る限りでは、『けいおん!』や『たまこま』とはだいぶ雰囲気の違う熱血な話っぽいので。

 それで、そこをサポートするのが京アニのエースであるベテラン・石原立也監督…という、はい、これは何の根拠もないファンの妄想です。すみません。

 まあそれは置いても、「女の子の部活もの」という超王道な題材の2015年アップデートバージョンをどう見せてくれるのか。こちらも期待大。


                      ◯


 個人的には『たまこラブストーリー』という10年代前半の金字塔が出現しただけで、アニメ生活的には幸せ!というレベルだったんですけど、他にも素晴らしい作品と山ほど出会えて。ほんとアニメ生活充実した1年だったなー。

 それでは、今年の…というよりも、これまた10年代前半のベスト・トラック!↓を聴きながら。よいお年を~。