ねざめ堂

アニメ・映画・音楽

2019-01-01から1年間の記事一覧

『アイリッシュマン』感想:ビジョンの消失

マーティン・スコセッシ監督『アイリッシュマン』(2019年)の感想です。 ド傑作でした。いろいろな面で素晴らしい映画だけど、とりわけ脚本がすごい。 スティーヴン・ザイリアンって作品ごとの当たり外れが激しい人なので、事前に名前を見たときはちょっと…

『ドリーマーズ』感想(改訂版):アイム・セット・フリー

数年前にアップした、ベルナルド・ベルトルッチ監督『ドリーマーズ』(2003年)感想記事の改訂版です。元記事の文意は変えないままに、読み辛いと感じたところに手を入れました。 本文中では『ドリーマーズ』にくわえて、ジャン・コクトー『恐るべき子供たち…

『リズと青い鳥』雑感(再掲)

このブログでは年末に『今年もまた暮れてった』というタイトルの記事を掲載するのが毎年の恒例行事になっています。 内容はたいてい、雑然とした一年間の振り返り。短時間で書き散らしてさっとアップして、お正月が過ぎると引っ込めてしまうという、松飾りみ…

『ハウンター』感想:抑圧の連鎖と、その終焉

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督『ハウンター』(2013年)の感想です。 近年ではドラマでの活動が目立つナタリにとっての、いまのところ最後の「劇場用映画」(この定義も揺らいでいるのでカギ括弧つき)。 Haunter Official Trailer #1 (2013) - Abigail Bresli…

マーティン・スコセッシ:ビジョンの拡大と収縮(後編)

※後編では『ディパーテッド』を中心に、21世紀に入ってからの作品について見ていきます。前編の冒頭で挙げた諸作品のネタバレをしていますので、ご了承ください。

マーティン・スコセッシ:ビジョンの拡大と収縮(前編)

◯前提:「スコセッシ的物語」の原型 マーティン・スコセッシは、ギャングやボクサーや救命士や宣教師といったキャラクターたち、あるいはラスベガスやウォール街、19世紀末ニューヨークの社交界といったコミュニティなど、じつに多彩な題材をとりあげて映画…