『アイリッシュマン』感想:ビジョンの消失
マーティン・スコセッシ監督『アイリッシュマン』(2019年)の感想です。
ド傑作でした。いろいろな面で素晴らしい映画だけど、とりわけ脚本がすごい。
スティーヴン・ザイリアンって作品ごとの当たり外れが激しい人なので、事前に名前を見たときはちょっと不安だったけど、いや疑ってすみません。脚本、匠の領域だった…。
長大な歳月を扱ったストーリーをがっちりとした構造で支えながらも締めつけすぎず、自在な時間軸の操作を行いながらも作為やストレスを感じさせず、豊富なダイアローグは活き活きと自然。これ、ザイリアンの最高傑作なのでは?
(時間の扱いの見事さに関しては、もちろん編集の力も大きいと思います。)
以前このブログでは、デビューから『沈黙 -サイレンス-』(2016年)時点までのスコセッシのキャリアを大雑把に振り返る、という記事を書いたことがありました。
今回の記事は、その補遺という位置づけです。そのため、リンク先の記事を読んでいないと、ややわかり辛いところがあると思います。ご了承ください。
以下の本文では『アイリッシュマン』にくわえて、『沈黙』『グッドフェローズ』『ゴッドファーザー』のネタバレをしています。
続きを読む『ドリーマーズ』感想(改訂版):アイム・セット・フリー
数年前にアップした、ベルナルド・ベルトルッチ監督『ドリーマーズ』(2003年)感想記事の改訂版です。元記事の文意は変えないままに、読み辛いと感じたところに手を入れました。
本文中では『ドリーマーズ』にくわえて、ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』のネタバレをしています。
The Dreamers (2003) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]
『リズと青い鳥』雑感(再掲)
このブログでは年末に『今年もまた暮れてった』というタイトルの記事を掲載するのが毎年の恒例行事になっています。
内容はたいてい、雑然とした一年間の振り返り。短時間で書き散らしてさっとアップして、お正月が過ぎると引っ込めてしまうという、松飾りみたいな感覚で気軽に更新している記事です。
去年、2018年末の記事では、春に公開された『リズと青い鳥』(制作:京都アニメーション)にまつわる雑感を書いておりました。なにせ上に書いたような性質の文章なので、読み返してみると、勢いまかせの乱暴なところが目につきます。
でもそのぶん、昨年末にひとりのアニメ・映画好きが、喜ばしい驚きをもって京都アニメーションの作品と向きあっていた感じが無防備に表れているのではないかな、と思い、あらためて投稿し直すことにしました。
(以下、2018年末の記事の再掲です。基本的にストーリーには触れていませんが、記事のいちばん最後で、ちょっとだけ結末についての感想を述べています。ネタバレを気にする方はご注意ください。)
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