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『インファナル・アフェア』感想:香港と中国の緊張関係の行方

ひさしぶりに『インファナル・アフェア』を観返したので、簡単な感想を書いておきます。

2002年公開の香港映画ですが、2023年のいま観ると、けっこうやるせない気持ちになる映画でした。

(以下『インファナル・アフェア』と、リメイク作品『ディパーテッド』のネタバレをしています。)

 

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この映画では、中国に返還された直後の90年代~00年代初頭の香港を舞台に、二人の主人公による「世界交換の物語」が描かれます。

トニー・レオン演じる警察官は、捜査のために、身分を偽ってマフィアの世界に潜入する。

いっぽうアンディ・ラウ演じるマフィアは、ボスの命令で情報を盗むために、警察官の世界へと潜入。

二人とも、自分にとって馴染みのある世界から、まったく正反対のルールが支配する世界へと移行するわけですね。

彼等は、自分にとって馴染みのない世界で与えられた任務をこなそうとしながら、同時に自分の元いた世界とのコンタクトを絶やさないようあがきます。

警察官はマフィアとして、マフィアは警察官として身分を偽りながらも、それぞれが元々持っていたアイデンティティをなんとか守ろうとするわけです。

この二人の主人公が立たされた立場を通じて象徴的に描かれるのは、00年代初頭の香港と中国の関係……

 

香港(民主主義+資本主義)と中国(権威主義)、どちらがどちらの体制を呑み込むか

 

という緊張関係です。

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雑記:U2、スフィア公演のレビューが出てきた話/ スコセッシの新作が20(金)公開

 

U2、スフィア公演のレビューが出てきた話

U2がラスベガスにオープンした新会場・スフィアにて敢行中の『Achtung Baby』レジデンシー公演。

前回、公演開始前の記事では、そのライブへの期待と不安(?)を書いてみました。

 

U2:UV Achtung Baby Live At Sphere は吉と出るか凶と出るか

 

(↑実質的には『Achtung Baby/Zoo TV』とは何だったのか? を再確認する感じの記事になっています。よろしくお願いします。)

スフィアでの公演は、9月末からスタート。

これがどうやら前代未聞のとんでもないライブになっている模様で、テレビやネットでも大量に映像が流れておりました。

(↓予備知識ゼロで体験したら恐怖を感じそうなオープニング)

 

 

「I'm ready for the what's next」という歌詞がこれ以上ぴったりくるステージングある……?

日本語のレビューもいくつか出てきています。

 

U2、「新時代のコンサート」でラスベガスを席巻 歴史的一夜の総括レポート | Rolling Stone Japan

U2がこけら落とししたラスベガス最新テクノロジー会場スフィアでライブを観た。コンサートそのものを次世紀に向けて変えてしまう想像を絶する体験。 (2023/10/13) 中村明美の「ニューヨーク通信」 |rockinon.com

 

やはり、まずは映像や音響の凄まじさに言及した記事が多いです。

(「第一報」的に公演のインパクトを伝えようとすれば、どうしてもそうなりますよね。)

そんな中、この記事はちょっとだけショーのコンセプト面にも触れていました。↓

 

(エルヴィスの映像を制作したマルコ・ブランビッラのコメント)

「ラスベガスでやるならエルヴィスを題材にして、アメリカ帝国の衰退をテーマにしようと。エルヴィスの死、そして彼の名声の絶頂と神話的なレベルでの追悼の類似性を描こうと考えたんだ」

U2がラスベガスの新名所「Sphere」に降臨! 巨大球体で繰り広げられた音楽とアートの規格外の融合|ARTnews JAPAN

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U2:UV Achtung Baby Live At Sphere は吉と出るか凶と出るか

 

U2がベガスでショー?

U2の大ヒットアルバム『Achtung Baby』(1991年)のリリース30周年を記念したレジデンシー・ライヴが、9月27日からラスベガスのホール「Sphere」で開催されるとのこと。

レジデンシー・ライヴ……「ベガスでの長期滞在型ショー」ときくと、私のような感覚の古い人間は、晩年のエルヴィス・プレスリーがやっていたような感じの催しを連想しがちだ。

すでに第一線を退いたミュージシャンが、中高年をターゲットにおこなう集金ディナーショー。

だが、近年はすっかり事情が変わっているらしい。

 

magazine.weverse.io

 

くわえて、この公演がこけら落としとなる会場「Sphere」も、最先端の視覚・音響技術がこれでもかと投入された、ものすごいハイテク・ホールみたいである。

建造費3,000億円超えですって。アメリカ先輩のこういう過剰なところ、好きよ♡

 

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forbesjapan.com

 

過去のライヴでも「ありえねえ…」という他ない、とんでもない光景を幾度も現出させてきたモンスターバンド・U2なだけに、このハイテク会場を駆使したステージングにも期待が高まるというものだ。

ベガス行けないけどね!

 

(こんなセットを携えてツアーをやるバカはU2ぐらいでしょう↓)

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……というような斬新なステージへの期待もさることながら、個人的に今回もっとも面白いと思うポイント。

それは、メンバー全員還暦超えのベテラン・バンドが、あの『Achtung Baby』の再演ライヴをわざわざ・よりによってラスベガスでやる、という点だ。

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