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『マザー!』感想:「アロノフスキー的物語」の発展型

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 ダーレン・アロノフスキー監督『マザー!』(2017年)の感想です。

 


mother! movie (2017) - official trailer - paramount pictures

 

 アロノフスキー監督については、長編デビュー作『π』(1998年)から『ノア 約束の船』(2014年)時点までのキャリアをざっと振り返る…という記事を書いたことがあったんですけど、今回の記事はその補完という位置づけです。

 

ダーレン・アロノフスキー:「自分」という地獄

 

 この中で書いたとおり、アロノフスキー監督はすべての作品において「人が ”他者” や ”外部” を遮断して “自分” という檻に自らを閉じ込めたきに出現する地獄」というシチュエーションを描き続けています。

 その内的・自閉的な「地獄」から脱出するか否か…というのが、アロノフスキー的な物語の基本フォーマットになっている。

 最新作『マザー!』はそのフォーマットを踏襲しつつ、さらに一歩前進を試みた野心作で、とっても見応えがありました。以下の本文ではネタバレをしていますので、ご了承ください。 

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『スカイライン -征服-』感想:未知との遭遇(反転バージョン)

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 アマゾンプライムに入っていたので、なんとなく観てみた映画『スカイライン -征服-』(2010年)。

 


映画『スカイライン-征服-』予告編

 

 エイリアン侵略もののB級SF映画なんだけど、これ『未知との遭遇』(1977年)の反転バージョンなんですね(以下『スカイライン』『未知との遭遇』のネタバレしてます)。

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『八つ墓村』感想:戦前と戦後のせめぎ合い

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 脚本家・橋本忍の訃報をきっかけに、『八つ墓村』(1977年版)をひさしぶりに観返してみました。

 


八つ墓村

 

 『羅生門』や『七人の侍』、『砂の器』も手掛けている人なのになんで『八つ墓村』?という感じですが、この映画の脚本が橋本さんだということを恥ずかしながら今回初めて知って、「子供のころにテレビで観た、あのやたらとおどろおどろしい映画もこの人だったのか」と興味を惹かれたのです。

 当時は例のキッチュな大殺戮シーンにしか目がいかなかったんだけど(友達と「村人32人殺しごっこ」やったりしてね)あらためて観ると、シリアスなテーマが立てられた映画だったのですね…。

 以下の本文ではネタバレをしていますので、ご了承ください。

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