(雑記)コーネリアス新作
※この雑記は夏中に削除します。
気が付けばもう7月。こわいですね。今年の前半はアルカ、フューチャー、ダーティー・プロジェクターズと、セルフ・タイトルの傑作アルバムが立て続けにリリースされて、音楽的には楽しい日々を送っておりました(頭の悪い感想だけど、3枚ともに「ザ・その人!」っていう感じの迫力があった)。
いっぽう、おそらく「Cornelius」というアルバムは出さないだろうなーという感じがする小山田圭吾ことコーネリアスだけど、先日の『Mellow Waves』のリリースにはやっぱりおおっ!と身を乗り出してしまいました。SalyuとかMETAFIVEとかサントラとか、いろんな形でのリリースはコンスタントにあったとはいえ、ソロアルバムとしては11年ぶりだもんね...。
いまどき「アルバム」とか「ソロ名義」にこだわるのも時代遅れかもしれないけど、おっさんとしてはしみじみとしたありがた味を感じてしまうのだ。しかも中身は「11年ぶり」とかの上げ底感抜きで「ザ・コーネリアス」な大傑作。
↓深夜のコーヒー&シガレッツな映像もぐっとくるファーストシングル(監督はおなじみ辻川幸一郎)。ぜひ大きい画面で。
Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here"
アルバム特設サイト(各種MVやインタビューが観られます):Cornelius - Mellow Waves
メロウにして過激、円熟しつつフレッシュ。インタビューで本人はしきりと「加齢」を口にしてたけど、いやいや加齢臭ゼロですよ!
ーーー:最近のAOR再評価とかソフト&メロウなR&Bの流れとか、そういうものは意識しました?
小山田:うーん……なんとなく。あまり詳しくはわからないけど。
ーーー:そこらへんが絶妙というか、そういう時代の流れみたいなものに乗っかっているようで、でも実は全然違うところから来ているようでもある。そのへんの微妙なさじ加減がコーネリアスらしい。
小山田:そこらへんがちょうどいいでしょ。あんまり乗っかりすぎてるのもアレだし(笑)
ーーー:といって完全に周りの流れとは関係なくマイペースというわけでもない。
小山田:うん、そうそう。
こういうバランスなー。
以前、坂本龍一は雑誌の「ゼロ年代の10枚」企画のなかの1枚に『Sensuous』(2006年)を選んでこんなコメントをつけてたんですが、
(…)世代的にぼくたちは、日本人なのにファンク的、黒人的なグルーヴを真似しようとしてきたし、真似とはいえそれが身体にちょっと入ってるんですね。ところがコーネリアスにはそれがない。すごく平面的で、平面にポツポツと穴があいているようなリズム感。これはね、すごい。ある意味で能や歌舞伎など、和のリズムに近いんです。
坂本龍一(SWITCH 2011年12月号)
CORNELIUS - Fit Song(『Sensuous』収録)
そういう特異なリズム感とかサウンドと「歌メロ」の融合が今回は極まっていて、ほんとに素晴らしいアルバムでした。毎回話題を集めるライヴは今回はどんな感じになるんだろ?(前回のツアー↓)
CORNELIUS - FIT SONG (ULTIMATE SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW)
『エレヴェイテッド』感想:ふたつの常識の衝突
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の短編映画『ELEVATED エレヴェイテッド』(1997年)の感想です。前回の『スプライス』感想記事のオマケ的な位置づけですが、この記事単体でも読めるようになっています。
ネタバレがありますので、ご注意ください。
◯ふたつの「常識」の衝突
約20分の短編『エレヴェイテッド』は、ナタリ監督の長編デビュー作『キューブ』の原型と位置づけられることが多いようで*1、たしかに両作にはいくつかの共通点があります。
(ほぼ)ワンシチュエーション・ワンセットものであること。「名前」が重要な要素として扱われていること(これはナタリ監督の全作品に共通)。閉鎖空間(エレベーター / キューブという「箱」)に閉じ込められた登場人物たちの心理劇としての側面をもつこと。
でも、大きく異なる点もあって、それは『キューブ』では描かれなかった「閉鎖空間の ”外側”」が『エレヴェイテッド』では描かれている、ということです*2。
*1:公開時には『キューブ』と併映され、DVDなどにも『キューブ』とセットで収録されていることが多いという理由もあるようです(ただし、一部のDVDには未収録だそうなので注意)。
*2:『キューブ』については『スプライス』の感想でちょっと触れていますが、迷路=システムの「外側」になんて出られない(自分たちもシステムの一部なので)...というのが物語のポイントになっています。